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『猫のいないまち』

 とおい空のはなし。

 ある田舎のまちに、ひとりの少年が暮らしていました。
 その少年は科学者だった父親の遺した大きなラボラトリイにひとりで住んでいて、まち一番の天才少年と謳われていました。少年はまだ12才でしたが、父親譲りの才能と学力を認められ、田舎まちからただひとり、都会の大学校に通う資格を持っていたからです。

 少年は大学校に通うためにまちの小学校をやめていたので、このまちに同じ年頃の友達はひとりもいませんでした。
 天涯孤独の天才少年にやさしくしてくれる人はたくさんいましたが、少年は大人に甘えることがうまくできず、少年が心を許せるのは、近所の野良猫たちだけでした。
 少年は、都会から追い出されてこのまちに住み着いた猫たちを、猫たちを包み込むやさしい光を持つこのまちを、愛していました。

 けれど。
 1ヶ月間の学会旅行から戻った少年を迎えたのは、猫のいないまちでした。
 日陰に潜む黒も、コンビニの輪止めに座る三毛も、ブロック壁を歩く鍵しっぽも、公園の猫だまりさえも、全部全部なくなっていたのです。
 荷物も置かずに猫を探す少年にまちの人は、猫嫌いの政治家が猫一掃作戦を実施したのだということを伝えました。

「おかえりなさい、とてもいい発表でしたね」
 ラボラトリイの前で少年を迎えた政治家は、公約で建設した大きな衛星テレビでシンポジウムをまちに垂れ流し、少年のいないあいだ街の美化に勤しんだのだと鼻を高くして語ります。けれども、その美しい街が放つ変わり果てた色と空気は政治家の言葉と相俟って、ひどい眩暈となり少年を襲いました。
 街はもう、少年の愛したあのセピア色のやわらかな日差し揺れるまちではなくなってしまっていたのです。
 猫の歩く道はピカピカに磨かれ、猫のいた木陰には真っ白いベンチが、公園の猫だまりには整然と花の羅列する花壇やカラフルな遊具が置かれていました。
 最新型の大きな衛星テレビを備えたテレビ塔。電線と共に猫をなくした景観の良い街並み。その中心に佇む、街が誇る天才少年のラボラトリイ。
――それはまるで、父親の書庫に並べられた古い近未来小説のような街並みだと、少年は思いました。
 とうてい真実味を帯びない、人工的に磨かれ機械的に並べられたシャンデリアのような街。
 大人がブロックを美しく積み重ねたような、息のない偽物の笑顔と寄り添う街。

 もう、少年が帰ってきても、三毛は「にゃあ」と鳴いてはくれません。
 荷物を抱えている時を狙って降りてくる鍵しっぽも、悠々と前を横切っては思わせぶりに振り向く黒も、ラボラトリイに餌を取りに来る猫だまりのリーダーも、まるで初めから無かったかのように、みんなみんな処分されてしまったのです。
 少年はその空虚に耐えきれずふさぎ込み、誰がラボラトリイのブザーを鳴らしても出てこようとはしなくなりました。
 どんなに心を尽くした言葉にも聞く耳をもたないままやがて1年が経ち2年が過ぎ、ラボラトリイは未だ街の象徴であるとされながらも、住む者のいなくなった家のように錆びた色を帯びてゆき、それはまるで少年の哀しみを浴びせたようだとまちの人々は語りました。
 まちは様相を変えても、街をゆく人々は何も変わらないのだと言うことに、少年は気付かずにいたのでした。


          〈つづく〉

***
久しぶりに、お話をupしてみたよ!

猫の話が書きたかったんだけど、気付いたら猫いなかった……!

これからどうなるかは、また今度ね☆

気に入ったら、また見てくれるとうれしいな。

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Appendix

くまっこにっき?

ここは前まで「クマザサ秘密通路」っていうブログだったんだけど、くまっこちゃんが乗っ取りました!
なので、くまっこが日々の恥ずかしいあれやこれやどれやをちまちま載せていく日記になったんだ。
物語とかイラストとか日記とかケーキとか載せていくから、仲良くしてね。

熊についてだよ。

くまっこ

Author:くまっこ
イラストレーターと見せかけて、ただのラクガキ熊。
楽譜の裏と100円ボールペンがお仕事道具。
72色入り298円のクレヨンが宝物。
(よく数えてみたら71色しかなかった。※同じ色が2本入ってた)

くまっこあるばむ。

いまこんなかんじ。

ついったなう。

お手紙ほしいよ!

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ちがうところ。

こんなの聴いてる。

来てくれてありがと。

見てくれてありがと。

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